<span class="hpt_headertitle">研究テーマ</span>

研究テーマ

研究テーマ

コミュニティ・デザインの難題=希望,まちづくりの現場が抱える葛藤=創造の源

地縁・血縁や物の直接交換を介した伝統的なコミュニティは社会の基層として地域の生活や文化,人々の行為,意識を引き受け,ある種のコントロールをする役割を担ってきた。現代ではそういったコミュニティそのものが様々に解体されつつあるが,壊れゆくもののなかから新たなコミュニティが生まれてきており,それと同時に,誰もが小さなプロジェクトをしかけコミュニティを選択的に形成できる時代になった。自分自身の生き方を考えるうえでも必ず,コミュニティ・デザインというものに行き当たる。

だからこそ,例えば関係の希薄化,地域の縮退,災害の多発など,ポジティブとは言えない変化のなかにこそ「私」とは何か,「私たち(のコミュニティ)」とは何かを自認し変えていける契機があると捉えたい。コミュニティ・デザインの難題は希望であり,まちづくりの現場における葛藤は創造性の源である。それらに真正面から向き合い乗り越えていける市民の力を涵養する現場の工夫や知恵を実践知として統合する理論・方法論を空間論,社会理論を軸ととして構築する。

このような認識のもと各論的に取り組んでいる研究テーマの例を以下に挙げる。


「住み継ぎ」を支える仕組みと文化を解明する

人口減少社会に突入し,日本では都市,地方を問わず放置された空き家・空き地が目立ってきている。人の手が入らなくなった建物や土地は朽ちていく。近い将来,私たちは大量の「ごみ」と共に暮らさなければならないのか。空き家を「ごみ」とするか「宝の山」とするのかは私たち次第。人口が減ってもゆたかな社会を実現するために,まちの「住み継ぎ」(=地縁・血縁によらない空間ストックの継承)はいかに可能か。各地の住み継ぎの実態の把握や支援の実践にもとづき,住み継ぎを支える再利用の仕組み,組織,文化を解明する。また,人口増加社会における過剰利用の空間(途上国のスラム等)の「住み継ぎ」についても研究し、フレキシブルな住まいや都市空間のあり方を探る。

keywords: 住み継ぎ,空き家・空き地,過小利用と過剰利用,資源とごみ,再利用文化

住民へのインタビュー
空き家実測調査の道具
空き家片付けワークショップ

住民主体のまちづくりの共創基盤をつくる

都市空間の過剰な効率化,合理化へのカウンターとしてのまちづくり(住民・市民を中心とした地域空間の共同管理・運営)は20世紀末から世界中の都市で起こりムーブメントとなった。日本でも多様性を重視したまちづくりの取り組みが各地で展開され、コミュニティ・デザイナーと言われる職能も育ちつつある。地域の自治力が低下するなか、住民主体のまちづくりに地域内外のアクターが加わり,連携・協働することはいかにして可能か。まちづくりの現場における対話の方法(ワークショップ,まちあるき,シリアスゲーム等)の再検討やまちづくりに関わる専門家の実践を記述する方法の開発等を通じてまちづくりの協同的実践をより豊かにするための共創基盤をつくる。

keywords:まちづくり,コミュニティ・デザイン,協同的実践,ワークショップ,専門家,実践の記述

ワークショップの企画・実施
防災まちあるきの企画・実施
地域の記述(防災まちづくりマップ)

「災間」の時代の生存空間をデザインする

自然災害,感染症,気候変動,経済危機など様々な災禍が私たちをとりまく現代,「災間」,すなわち今を「災後」ではなく,先の災禍と次なる災禍の「間」と捉えるという態度が問われている。「災間」の認識にもとづき,平時と非常時を横断する視点をもって「生存空間」,すなわち災禍にあっても地域や人々の暮らしが本来もつレジリエンス(選択的回復力)を発揮できる空間はいかに可能か。平時における地域ごとの防災・減災の取り組みや共助に欠かせないつながりを生む祭礼・儀礼や居場所(京都の地蔵盆,居場所づくり等)の様態,非常時における住宅・生活再建と再定住,地域再生の長期的なプロセスと復旧・復興事業との関係の把握を通じて生存空間のデザインについて考える。

keywords:災間,防災・減災,生存空間,レジリエンス,共助,再定住,復旧・復興

能登半島地震被災地の調査
津波被災者用再定住地の立地と世帯移動
町内空間と地蔵盆の際の使われ方